魔機復元01
01 光あれ まずはじめに じめんをかく (谷川俊太郎『えをかく』) 見渡す限りの、砂と空。 真昼の日差しを浴びた砂はただただ白く輝き、空はひたすら青い。 気がつくとぼくは、砂漠の真ん中に立っていた。 さて、読者諸兄には説明が必要だろう。少々“とっぴ”な話もあるが、まずは聞いて欲しい。 ぼく、西崎宗夜(にしざきそうや)は俗に言う魔法使いだ。...
View Article魔機復元03
03 ここはどこだ!? それから おひさまと ほしと つきをかく (谷川俊太郎『えをかく』) さて。 タブレットの表示を見ると、井戸の方はまだ時間がかかるようだ。既に夜を越す算段はついているので、次はもうちょっと快適に過ごす方法を考えよう。...
View Article魔機復元04
04 No data in a known language. そうしてやっと ひとりの こどもをかきはじめる (谷川俊太郎『えをかく』) 人類が言語を編み出したのは約七万五千年前からだという。しかし、ヒトの脳は十五万年前には既に「言語を理解できる形」になっていたとも言われる。人類がいかにして言語能力を育んでいったのかについては、21世紀の現在でもまだ分かっていないことが多い。...
View Article魔機復元06
06 マナリーチ そして そのこのたってる みちをかく (谷川俊太郎『えをかく』) 井戸(仮)の底に少しだけ溜まった水を掬い、喉を潤す。タブレットで15分のタイマーをセットする。 それから、静かに砂漠に座し、しばし瞑想する。頭を空っぽにして、何も考えず、何も思わず、ただ自分の呼吸と循環する血液のリズムに意識を向ける。 タイマーが鳴ると同時に目を開き、術式を起動する。 「Start Reset...
View Article魔機復元07
07 魔機復元 ながれつづける ちと くさりはじめた にくをかく(谷川俊太郎『えをかく』) タブレットを井戸(仮)の中に隠す。少し塩が溜まってきていたので、塩を舐めながらもう一度水で喉を湿らす。疲れた身体に塩の味が染み渡り、腹の虫がぐう、と鳴った。 魔法使いの間では、だいたい50m以内の距離で行う戦闘を「魔法近接戦」(Magical Closed...
View Article魔機復元08
魔法工学者 ―― Who am I? 「あなたは何者なのか?」 と聞かれたら、ぼくは何と答えるべきだろう? もちろんぼくは魔法使いで魔法学者だが、「何の」魔法学者なのかと言われるとちょっと言いよどんでしまう。 若い魔法使いの多くは、実践的な魔法よりも先に、まず魔法の基礎理論を学ぶ。そうしないと、思春期に重大な魔法の暴走を引き起こして二度と魔法の使えない身体になってしまうことが多いからだ。...
View Article魔機復元09
エルランとイスカンダル ―― Elran & Iskandar エルランの意識状態が回復するまでは、なるべく動かない方がいいだろう。ヘッドライトを修理しながら、ついでに車体の点検もする。タイヤの空気圧は問題なし。電池もまだ予備がある。冷却系異常なし。しかし、セラミックのフレームにごく小さなクラックが入っていた。たぶん放置してもしばらくは大丈夫だと思うが、念のため焼き直して修復する。...
View Article